ご自宅で認知症の方を介護されていると思わぬ入院や介護の負担軽減のため施設に入所することがあると思います。
介護の負担を減らすために施設に預けたのに、病気の治療のために入院したのに・・・
帰宅願望や暴言などの認知症の症状が急に悪化してしまったと感じ不安になった方もおられるもではないでしょうか。
今回は、認知症とせん妄の違いやせん妄の原因についてお話しさせていただこうと思います。
目次
せん妄って何?
せん妄とは、「脳機能の失調によって起こる、注意の障害を伴った、軽い意識のくもり(意識混濁)を基盤とする、いくつかの症状をともなった症候群のこと」といいます。
難しいですしわかりにくいですよね・・・
簡単に言うと、
時間がわからなくなったり、今自分がどこにいて何をしているのか分からず頭が混乱している状態のことです。
頭がボートしているためしっかり質問にも答えることが出来ないですし、不安から落ち着かず睡眠のリズムが崩れてしまうことも特徴です。
高齢の方はせん妄になることが多く、15~50%の方が経験するといわれています。
せん妄は様々の原因によって起こります!
・夜間せん妄
日中は穏やかに過ごしていても夕方から夜中にかけて起こるせん妄です。
・術後せん妄
手術をうけた後、しばらくしてから起こるせん妄のこと
・薬剤性せん妄
薬の飲み合わせや今まで飲んでいた薬をやめてしまったことにより引き起こされるせん妄で薬が効きすぎてしまいやすい高齢者や小さなお子さんに多くみられます。
・アルコール離脱せん妄
アルコール依存症の方がアルコールを断つことによりおこるせん妄で手の震えも一緒に現れます。
せん妄を起こしてしまう例として...
せん妄を起こす原因は様々ありますが、認知症をもともと患っている方は特に、入院や施設の入所で引き起こすことが多くあります。
私たちにとっても、入院は非日常のことですよね?
認知症がない方でも、手術や集中治療室に入院していて強いストレスにより起こることもあります。
認知症の方はもともと病気のせいで脳が萎縮してしまっています。
そのため、自分が今どこにいるのかを把握し理解することがもともと苦手になっています。
認知症を持っていない方でしたら、病気の治療のため休息が必要だとすぐ理解でき入院生活を送ることが出来ます。
それでも、入院といういつもと違う環境や病気に対する不安は大きいものだと思います。
それに加え、「突然家族と離れ離れになってしまった」、「ここがどこで何のために連れてこられたのか分からない」、「家族が心配なのに家に帰してもらえない」という状況は認知症の方に強いストレスとなり「せん妄」を起こしてしまうと考えます。
もう一つ、認知症の方は“短期記憶”が苦手です。
私が働く施設のことですが、入所された利用者様で前日までにご家族様とケアマネージャーから「新しく生活するための場所が決まるまで施設に入所して待っててね」と何度も会話し、前日には「わかった」と理解していただいていていた方がいらっしゃいました。
ですが、入所当日になって「行きたくない」「私は騙されて連れてこられた」といわれ施設に来られてもスタッフやほかの利用者様に訴えておられる方もいました。
実際に次のところを探す間の入所ですし何もうそをついていませんがご本人様にとって覚えていないのですから騙されて連れてこられたと感じてしまうのも当たり前です。
関わりを何もせずこのまま強いストレスの状態だとこの利用者様も「せん妄」を起こしてしまうかもしれませんね。
少しお話しがそれましたが、この“短期記憶”が苦手なことも「せん妄」を起こしてしまう一つの原因です。
認知症とせん妄の違いとは?
せん妄 | 認知症 | |
発症 | 急激 | 緩やか |
初期症状 | 錯覚、幻覚、妄想、興奮 | 記憶力の低下 |
意識障害 | あり | なし |
日内変動 | 夜間や夕方に悪化することが多い | 大きく変化はなし |
期間 | 数日から数週間 | 長期間 |
身体疾患 | 合併していることが多い | みられないことが多い |
薬剤の関与 | しばしばあり | ほとんどなし |
せん妄と認知症の違いを大まかに表にしたものが上の図です。
“急に症状が悪化した”“呼びかけても反応がない”“安静にしていなければいけないのに出来ない”“暴れてしまう”などの症状があったとき、ついつい認知症だから仕方がないと思ってしまいますが一度「せん妄」を疑ってみることもいいと思います。
最後に
今回は、せん妄の原因と認知症との違いについてお話しさせていただきました。 次回、せん妄の対応と予防についてお話しさせていただこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。