私は老健(介護老人保健施設)で働き今年で3年になります。
主な老健の役割として、病院と在宅(自宅)の中間施設であり、病院を退院しても在宅で過ごすには不安があり困難な方が、在宅で安心して過ごせるようにリハビリをする施設となります。
そして、もう一つの役割として最近多くなってきている看取り(ターミナルケア)という役割も担っています。
看取りとは、その人が最後まで生きようとしている時間を一緒に過ごさせて頂くこと。
利用者様とご家族様が後悔のないよう少しでも穏やかな時間を過ごして頂くこと。
利用者様とご家族様が最後の瞬間までどう生きたいか向き合い話し合える環境を整えること。
と私は捉えています。
今回は、老健の役割の中で多くなってきている「看取り」をテーマに、関わらせて頂いた利用者様とご家族様のお話をさせて頂きたいと思います。
目次
色々な楽しみ
私が働いている施設では、毎月の誕生日会を始め
春にはお花見
夏には夏祭りやスイカ割り
秋には七夕や公園の散策
冬にはクリスマス会やお抹茶
など詩季織々の行事を企画し行っています。
その中で、先日行った夏祭りでのお話をさせて頂こうと思います。
私の職場では、行事を行うときはご家族様にも参加していただき、利用者様と一緒に楽しい時間を過ごし、楽しい思い出を残せるように心がけています。
ご家族様のしてあげたいという想い
Aさんの経緯
Aさんは、飲み込む力(嚥下機能)の低下から口の中で食べ物を溜め込んでしまい食べ物を飲み込めなくなった利用者様でした。
医師の診察やST(言語聴覚士)の評価から誤嚥のリスクがとても高く誤嚥性肺炎の危険があるため絶食との指示が出ていました(ただし、誤嚥のリスクをご家族様に理解していただいたうえでAさんが好きな物は少量なら食べていいということになりました)。
言語聴覚士とは
ことばによるコミュニケーションの問題は脳卒中後の失語症、聴覚障害、ことばの発達の遅れ、声や発音の障害など多岐に渡り、小児から高齢者まで幅広く現れます。言語聴覚士はこのような問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために検査・評価を実施し、必要に応じて訓練、指導、助言、その他の援助を行う専門職のこと。
医師からのムンテラ(病状説明)があり、ご家族様の意向も合わせ点滴を行うことに。
同時に意向確認者という看取りの同意書もご家族様からもらいます。
意向確認書とは急変があった際に病院へ搬送を希望するのか、このまま施設で最後の時間を過ごすのかをご家族様に書面で確認することです。
点滴管理のためほとんど寝たきりの状態で、日に数時間車椅子に座りご家族様と過ごしていただいていました。
数日がたったある日、夏祭りの季節となりAさんのご家族様にも参加の声掛けをさせていただきました。
夏祭りの話をさせていただくとAさんのご家族様から、自分では着せ方がわからないができれば好きな浴衣を着させてあげたいと申し出がありました。
当日に対応できる職員がいればとお話ししていたようで、Aさんとご自身の浴衣をご持参され来所されました。
Aさんとご家族様の浴衣の着付けをお手伝いさせていただいたのですが、Aさんの浴衣を見たときご家族様のAさんを想う気持ちがとても伝わってきました。
浴衣にははさみを入れAさんが着やすいように上下セパレートにし丁寧に縫われていたり、ボタンをつけていたりとお手伝いがいる?と思うくらい手が加えられていました。
浴衣をみて、ご家族様に「手が加えられていたすごいですね」とお話しさせていただいたのですがご家族様から
「この帯もこの浴衣も、お母さんが私のために用意してくれたもので…」
「子の浴衣が一番お母さんが好きな色かなって」
「私は、切っただけなんです。」
と話され
「今まで何もしてこなかったから」と話してくださいました。
着付けの間Aさんとの思い出を話してくださり、お二人の着付けが終わり夏祭りに参加されました。
夏祭りから帰ってきたご家族様とAさんの表情は明るく、「たこ焼きを一口食べました」、「綿あめを食べました」と笑顔ではなしてくれました。
Aさんは、車椅子に座っても目を閉じうつむいていることが多くなっていたためご家族様が嬉しそうに話されていてとてもうれしかったです。
Aさんにとって夏祭りの参加は良い刺激になったのではと考えています。
その後、数日間お顔が上がりしっかりとめが開いたAさんを見ることが出来たのもとても印象的です。
まとめ
親子関係やその人を取り巻く環境は人それぞれちがいがあると思います。
ですが、最後の時間をお二人で楽しい時間を過ごし思い出を作っていただくそんなお手伝いが少しでもできたのかなと…
そう、思わせていただくとてもいい経験をさせていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。